基礎知識

Disease Basics
診療案内

ミスや忘れ物が多い原因は、認知症ではなくADHD(注意欠如多動症)かもしれません。

ADHD(注意欠如多動症)とは、不注意、多動性、衝動性の3つを主な症状とする発達障害です。

・不注意
発達水準からみて不相応に集中が続かない、忘れ物が多い、見落とししてミスが多く、順序立てて行動することが苦手である。

・多動
じっと座っていられない、落ち着きがない、話し続けるなど行動の抑制が困難である。

・衝動
順番を待てない、人の話をさえぎる、思いついたことをすぐ行動してしまう。

上記の特徴が持続的に、かつ12歳以前からこれらの行動特徴を認め、学校、家庭、職場などの日常生活、社会生活の複数の場面でみられる場合に診断されます。

ここでは、成人後のADHDの特性で社会生活に支障がでる場合について述べていきます。

仕事で単純なミスを繰り返したり、職場によく遅刻したり、コミュニケーションがうまくとれず人間関係がうまくいかないなどで悩みや生きづらさを感じている方は少なくないのではないでしょうか。

発達障害は、生まれながらのもつ特性であるので子どものうちに診断される病気と考えがちですが、じつは大人になってから気づくケースも意外と多いです。

発達障害のそれぞれの特性は子どものころから現れていますが、子どものころにはあまり問題視されなかった特性が、年を重ねるごとにその人の置かれている状況が、進学や就職などの環境の変化で複雑化し、対応しなければいけない事柄が多くなり、発達障害の特性から日常生活や社会生活になんらかの問題点が生じてしまいます。

例えば、仕事が自分の特性に合わず、ミスを繰り返したりすると職場の人からやる気がないと言われたり、迷惑がられることもあります。また、周囲の人とうまくコミュニケーションがとれなかったりすると空気が読めない人などと敬遠されたりすることもあるのではないでしょうか。

そうした日常生活や社会生活上のストレスから、うつ病やパニック障害などを発症してしまうこともあります。


ADHD診断基準
DSM‒5 精神疾患の診断・統計マニュアル引用

A 不注意
以下の症状のうち6つ(またはそれ以上)が少なくとも6カ月持続したことがあり、その程度は発達の水準に不相応で、社会的および学業的/職業的活動に直接、悪影響を及ぼすほどである。

注:それらの症状は、単なる反抗的行動、挑戦、敵意の表れではなく、課題や指示を理解できないことでもない。青年期後期および成人(17歳以上)では、少なくとも5つ以上の症状が必要である。

(1) 学業、仕事、または他の活動中に、しばしば綿密に注意することができない、または不注意な間違いをする(例:細部を見過ごしたり、見逃してしまう、作業が不正確である)。

(2) 課題または遊びの活動中に、しばしば注意を持続することが困難である(例:講義、会話、または長時間の読書に集中し続けることが難しい)。

(3) 直接話しかけられたときに、しばしば聞いていないように見える(例:明らかな注意を逸らすものがない状況でさえ、心がどこか他所にあるように見える)。

(4) しばしば指示に従えず、学業、用事、職場での義務をやり遂げることができない(例:課題を始めるがすぐに集中できなくなる、また容易に脱線する)。

(5) 課題や活動を順序立てることがしばしば困難である(例:一連の課題を遂行することが難しい、資料や持ち物を整理しておくことが難しい、作業が乱雑でまとまりがない、時間の管理が苦手、締め切りを守れない)。

(6) 精神的努力の持続を要する課題(例:学業や宿題、青年期後期および成人では報告書の作成、書類に漏れなく記入すること、長い文書を見直すこと)に従事することをしばしば避ける、嫌う、またはいやいや行う。

(7) 課題や活動に必要なもの(例:学校教材、鉛筆、本、道具、財布、鍵、書類、眼鏡、携帯電話)をしばしばなくしてしまう。

(8) しばしば外的な刺激(青年期後期および成人では無関係な考えも含まれる)によってすぐ気が散ってしまう。

(9) しばしば日々の活動(例:用事を足すこと、お使いをすること、青年期後期および成人では、電話を折り返しかけること、お金の支払い、会合の約束を守ること)で忘れっぽい。


B 多動症および衝動性

以下の症状のうち6つ(またはそれ以上)が少なくとも6カ月持続したことがあり、その程度は発達の水準に不相応で社会的および学業的/職業的活動に直接、悪影響を及ぼすほどである。

注:青年期後期および成人(17歳以上)では、少なくとも5つ以上の症状が必要である。

(1) しばしば手足をそわそわ動かしたりトントン叩いたりする、またはいすの上でもじもじする。

(2) 席についていることが求められる場面でしばしば席を離れる。

(3) 不適切な状況でしばしば走り回ったり高い所へ登ったりする(青年または成人では落ち着かない感じのみに限られる場合がある)。

(4) 静かに遊んだり余暇活動につくことがしばしばできない。

(5) しばしばじっとしていない、またはまるでエンジンで動かされているように行動する。

(6) しばしばしゃべりすぎる。

(7) しばしば質問が終わる前に答え始めてしまう。

(8) しばしば自分の順番を待つことが困難である。

(9) しばしば他人を妨害し、邪魔する。

A、Bの特徴が以下の点を満たす必要があります。

・不注意または多動性、衝動性の症状のうちいくつかが12歳になる前から存在していた。
・不注意または多動性、衝動性の症状のうちいくつかが2つ以上の状況(例:家庭、学校、職場など)において存在する。
・これらの症状が社会的、学業的、または職業的機能を損なわせている明確な証拠がある。
・他の精神疾患ではうまく説明されない。


治療法

A 薬物療法

・メチルフェニデート塩酸塩徐放錠:コンサータ
脳内でドーパミンとノルアドレナリンの濃度を高めることで不注意症状や頭の中の雑音、モヤモヤに強い効果があります。

比較的即効性があり服用後すぐに効果を実感できる場合が多いですが、食欲減退や不眠など副作用が生じることがあります。夜の不眠を避けるため朝に服用します。

・アトモキセチン:ストラテラ
ノルアドレナリンの再取り込みを阻害することでADHDの不注意症状、多動症、衝動性特性全体の症状に効果が期待されます。

コンサータと比べて副作用が少ないですが即効性はなく、効果が表れるまでに1~3カ月程度かかります。

・グアンファシン塩酸塩:インチュニブ
特に多動症、衝動性や感情不安定に効果があります。


B 非薬物療法

(1) 環境調整
ADHDの忘れやすい、注意が散りやすいといった特性は、日常生活の工夫で対応することができます。

・スケジュール管理の徹底
・集中できる環境づくり
・仕事や課題を細かく区切る(ポモドーロ・テクニック)

(2) 周囲の人のサポート

・具体的で短い依頼
・できたことの評価
・職場や家族との連携

(3) 認知行動療法
自身の思考パターン(認知)と行動の関連性を理解し、間違った考え方や行動を修正していく心理療法です。

・セルフモニタリング
・思考のリフレーミング
・報酬システムの活用


仕事や家庭でミスが多い、忘れものが多いなどで認知症ではないであろうかと不安で当院に受診され、診察させていただくとADHDの可能性が疑われる方が少なからずおられます。

当院では、ADHDの検査、カウンセリング、コンサータ内服希望の方については他施設に紹介させていただきますが、ご相談していただくことで、専門家や行政による就労、医療に関する支援を受けたり、さまざまな生活上の工夫の仕方を知ることができます。

失敗の繰り返しや人間関係のつまずきが多くて生きづらさを感じていたり、自分は他の人と何かが違うのかもしれないと感じていたり、発達障害かもしれないとお悩みであれば、ご遠慮なくお問い合わせください。




いなざわ駅前内科クリニックでは、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症などの生活習慣病をはじめ、頭痛、脳卒中、パーキンソン病、認知症、てんかんなどの脳神経疾患、不眠症、うつ病、適応障害、アルコール依存症、不安症、強迫性障害などの精神疾患・メンタルヘルスの問題に対応しております。一宮市、名古屋市、稲沢市、岐阜市、清須市、岩倉市、津島市、愛西市、あま市、北名古屋市など、幅広い地域から多くの患者様にご来院いただいております。稲沢市で内科・脳神経内科・心療内科・精神科をお探しの方は、いなざわ駅前内科クリニックへお気軽にご相談ください。