基礎知識

Disease Basics
診療案内

顔面神経麻痺は、早期診断、治療で症状を完治できる可能性があります。

顔面神経麻痺とは、第VII脳神経(顔面神経)の末梢性障害により障害側の顔面筋のコントロールができなくなった状態で、代表的な症状は、まぶたが閉じられない、口元から水が漏れる、ひたいにしわが寄せられないなどがあります。 

原因

  1. ベル麻痺:原因不明の急性発症末梢性麻痺で年間罹患率は10万人中約20~50人ほどで最も頻度が多い。ヘルペスウイルスの潜在的再活性化が深く関わると考えられており、顔面神経管内での炎症・浮腫により伝導障害が生じ、片側顔面の筋力低下が生じる。
  2. ラムゼイ・ハント症候群:水痘帯状疱疹ウイルスの再活性化による顔面神経内の膝神経節の炎症が原因で、耳介、外耳道の痛み、水疱、難聴やめまいなどを伴う顔面神経麻痺が生じます。ベル麻痺より重症化しやすく、後遺症を残すことがあります。
  3. 外傷性:頭部外傷(側頭骨骨折など)や手術時の神経損傷。
  4. 脳卒中:中枢性顔面神経麻痺に分類され、顔面の上半分の動きは保たれているが、顔面下半分の麻痺が生じ、片側顔面全体が麻痺する末梢性顔面麻痺とは区別されます。
  5. 脳腫瘍:腫瘍が顔面神経を直接圧迫したり、浸潤したりすることで顔面神経麻痺が生じます。
  6. ライム病:マダニ刺咬によりスピロヘータの一種であるボレリアが感染する細菌感染症です。ベル麻痺とは異なり,その麻痺は両側性となることがあります。
  7. サルコイドーシス:はっきりとした原因は明らかではないですが、免疫異常が原因と考えられており、マクロファージやリンパ球と呼ばれる免疫細胞が異常に活動し、非乾酪性類上皮細胞肉芽腫という腫瘤が、肺、眼、皮膚、心臓、筋、神経などのあらゆる臓器に生じ、様々な症状が生じます。末梢神経障害は手足の神経よりも顔面神経に発生することが多く、顔面神経麻痺をきたし、しばしば両側の顔面神経が障害されます。

症状 
頻度的に多いベル麻痺の症状を述べていきます。
・片側の顔に症状が起きることが多い。
・顔面の症状:まぶたが閉じられない、口元から水が漏れる、ひたいにしわが寄せられない。
・聴覚過敏:音が大きく聞こえ響く。
・舌の前側2/3の部分の味覚障害。
・顔面麻痺で目が閉じにくいことで、角膜が乾燥してしまい潰瘍が生じる。

診断
顔面神経麻痺が中枢性神経障害か末梢性神経障害による症状かを鑑別することが重要です。中枢性神経障害であれば、通常、前額部の麻痺はみられなく、末梢性神経障害であれば前額部を含めて片側顔面全体の顔面筋麻痺がみられ診察である程度推測できます。

・血液検査:ウイルス感染やサルコイドーシスの有無を調べます。
・神経電動検査:神経の麻痺の程度などを調べ、患側の複合筋活動電位が健側の10%未満なら予後不良と考えられています。
・頭部CT画像、頭部MRI画像:脳卒中や脳腫瘍の除外目的で行われます。

治療
ステロイド内服
プレドニゾロン 60 mg/日を5~7日間投与し、その後1週間かけて漸減し終了します。体重が約60 kgの場合、1 mg/kg/日に相当量を使用するが、軽症例や高齢者では初期用量を30 mg/日とする場合もあります。
重症例では、プレドニゾロン100~120 mg/日(約2 mg/kg前後)を5日間投与し漸減し終了します。またはメチルプレドニゾロン500 mg静注を3日間(パルス療法)施行後にステロイドの内服に切り替えます。
抗ウイルス薬:ラムゼイ・ハント症候群や重度例での併用を強く推奨されます。
ベル麻痺の場合
・アシクロビル 1日合計 1000 ~2000mg、 5〜7日間
・バラシクロビル 1日合計 1000 mg、5~7日間
ラムゼイ・ハント症候群の場合
・バラシクロビル 1日合計 3000 mg、7日間
・ファムシクロビル 1日合計1500㎎、7日間
ビタミン剤:ビタミンB12の一種で神経細胞の修復目的で使用します。
メチルコバラミン 1日1500μg/分3
神経減圧術:薬物療法で症状の改善がみられない場合は、顔面神経減圧術が施行されます。側頭骨の中の炎症などでむくんでいる顔面神経を包んでいる骨を削って除圧する手術です。発症後3週間以内の施行が推奨されます。
リハビリテーション:顔面の不自然な動き(病的共同運動)やひきつれ(顔面拘縮)などの後遺症を予防する目的で行います。
顔面神経麻痺が部分的な場合は、治療の有無にかかわらず、大半の人が数カ月以内に完全
に回復します。重症例やラムゼイ・ハント症候群など重度な麻痺がある場合、顔面麻痺な
ど後遺症を残すこともあります。
顔面神経麻痺の症状は、突然発症することが多く、そのまま放置してしま
うと、治療開始が遅れ後遺症を残す可能性が高まります。早期治療が症状
の改善につながりますので脳神経内科、耳鼻咽喉科の在籍する医療機関に
早めに受診することが大切です。
当院も脳神経内科医が在籍しておりますのでご不明な点がありましたら
お問い合わせください。

 




いなざわ駅前内科クリニックでは、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症などの生活習慣病をはじめ、頭痛、脳卒中、パーキンソン病、認知症、てんかんなどの脳神経疾患、不眠症、うつ病、適応障害、アルコール依存症、不安症、強迫性障害などの精神疾患・メンタルヘルスの問題に対応しております。一宮市、名古屋市、稲沢市、岐阜市、清須市、岩倉市、津島市、愛西市、あま市、北名古屋市など、幅広い地域から多くの患者様にご来院いただいております。稲沢市で内科・脳神経内科・心療内科・精神科をお探しの方は、いなざわ駅前内科クリニックへお気軽にご相談ください。